ミステリ」カテゴリーアーカイブ

繋がれた明日を読んで

やるせない物語で読むのが辛いのだが、真保裕一の書き手としての技量が、本に向かわせる。そしていつの間にか読み終えている自分がいる。
けんかのアクシデントで人を殺してしまった主人公が刑務所から仮出所したところから話は始まる。
殺してしまったけんか相手から、売られたけんかなのに何故自分が刑務所に入らなくてはならないのか?死んでしまえば過去の過ちは精算されるのか?と言った不満を常に自問自答しながら主人公は仮出所の生活を始める。
保護観察の方の支援により、就職先を斡旋され働き始めるが自分の過去を中傷するビラが撒かれ周囲との関係が悪化する……
この作者の作品はほとんど読んでいるが、情景を脳裏に浮かばせる技術とスピード感は他に類を見ない。本を読んでいるという感覚をわすれ物語の中に引き込まれる。
冒険物などが好きな人にはおすすめだ。

魔神の遊戯 島田荘司

あれ?これ読んだことないな。

これが、この本を最初に見た時の感じである。『涙流れるままに』の発売イベントに行ってサイン本を頂き、握手までした、自称?島田荘司ファンとしては、大変お恥ずかしい限りである。
自己弁護のようで大変申し訳ないが、この本が販売されたのが2002年8月、今の仕事を始めて丁度2年目一番忙しい時期だったため発売を知らなかったようだ。言い訳に過ぎないが…
本題に入ると、島田荘司は壮大なトリックばかりが取り上げられるが、そんなことはない。この作品でも、精神的に追い詰められる被害者の心理描写が読んでいる者を同化させるがごとく丁寧に描かれている。
秋吉事件以降、不当な差別に対する被害者の内面的な描写がより鮮烈になったような気がする。
当作品の登場人物のロドニー・ラーヒムに関しても、旧約聖書のジューイッシュに対するエジプト人の迫害の神話の世界から始まり、2次大戦以降に得たはずの安息の地での幸せも父がテロの票的になってしまった事で終わりを告げる。
新たな出発の地として選んだスコットランドの地でも、母親が売春を行うことでしか生き延びていけない不幸へと話が進む。読んでいて正直辛くなる部分もあるがこの描写がより物語に深みを与えている。
もちろん、トリックがないわけではなく、最後には、叙述ミステリ的な手法も含まれていて、トリックの大胆さにも舌を巻く。
今まで、読んでいなかった事を反省させられた。これからも、島田荘司の新作には目が離せない。

モロッコ水晶の謎

有栖川有栖の短・中編集。
特に、可もなく不可もなく無難にまとまってる。ミステリの最大のなどとなる部分のインパクトはあまり無く、主人公と火村との会話は安定していて、読みやすくストーリーを素直に追っていける。
読みやすいライトな感じ。
決して名作ではないが、読んで損はない。

θは遊んでくれたよ

少し体も楽になったので、行き帰りの電車の中で、久しぶりに読書する時間がとれた。
ここ数ヶ月はとても忙しくて、毎週買っている雑誌に目を通すのが精一杯だが(呼んでる途中にウトウトしてしまうか、疲れ切ってiPodを聞いているくらいが精一杯の時もままある)、この時期なら買ったけどまだ開いてすらいない小説を読む貴重な時間が取れる。
そんなこんなで、今日は取り合えず森博嗣氏の「θは遊んでくれたよ」を読んでみた。

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お久しぶり 御手洗君!

季刊:島田荘司04
今日、「季刊・島田荘司04」を購入した。前回の、「季刊・島田荘司03」から、すでに約5年が経過している。これって、季刊っていえるのだろうか・・・
なんてことは、島田荘司ファンの私にとっては愚問であるわけで、御手洗と石岡君の最新作が読めるだけでもう十分に感激してしまう。
今回は、御手洗物の新作はもちろん、島田氏自身が広島の母校で行った講演を中心に構成されていて、以前に比べるとその論調は糾弾をするような物ではなく丸みを帯びていて、悪しき過去をふまえ未来へと繋げる考え方を模索している。
筆が進まなくなるので、本日より「ですます調」の文体は止めることにした。別に怒っているわけではないので(結構初対面の方に怖いと思われる節がある)、気軽にコメントやトラックバックをして欲しい。